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「この万年筆は一体いつ頃のパイロットなんだろう。」 実家の書斎奥深く、使われなくなった筆、ペン達が眠りに就く筆立ての中、埃をかぶっていた一本の万年筆を見つけた時、そう思わずにはいられなかった。 「PILOT」と刻印されたペン先とキャップに付いた金色のクリップ。 黒いエボナイトの軸は意外と細い。が、持ってみると決してそうではない。 ちょうど手になじむ。(もっとも私の手が小さいせいもあるのかもしれないが) この万年筆の前のオーナーを考えてみる。 父ではない。私が子供の頃、確かに父は背広の裏ポケットに万年筆を持っていた。 しかしそれはペン先が金で銀色の金属の軸をしたパーカーだった。 じゃあ、これは誰の?などと思いながらこの筆が使えるかどうか観察する。 首軸には十何年もの間、カートリッジが刺さったままになっており、遙か昔に乾いたインクはこのペンの中で接着剤として役目を果たしていた。 この接着剤いや、インクを万年筆内から完全に抜き取り、新品のカートリッジをさせばもとの性能を発揮する事が出来るのではないかと思い、ぬるま湯をはった洗面器の中に首軸を入れておいた。 万年筆のメンテナンスとして中のインクを抜く場合、一昼夜ぬるま湯に浸けるのだがこの筆は違った。 一昼夜浸ける事を三回行う事となった。 多分、カートリッジを使い切るどころか、新品のをさしてそのままにしていたのだろう。 それでもカートリッジはなかなか首軸を離れてくれない。 やや強引にひっぱったところやっとカートリッジは外れ、この筆はカートリッジを十何年振りに味わう事となった。 試し書きをしてみた。 すんなりとインクがペン先を伝い、書く事ができたのは意外だった。 しかし、誰だろうこんな雑な扱いをする前のオーナーはと思わずにはいられなかった。 ペン先に刻印された「F」はやや硬めの細字。 現在私が使っているウオーターマンも同じ「F」だが、このパイロットはそれ以上に細くきめ細かい印象でなんか書き覚えがある気がしてならない。 たまたま法事の件で実家に電話する必要があったので、実家に電話したさい、この万年筆の事を電話に出た母に聞いてみた。 私はそこで絶句する事となる。 どうもこの万年筆、母の所有物だったのを子供の頃の私が勝手に持ち出し、使わなくなったものだったらしい。(笑) 日本産万年筆型録―今買える国産万年筆のすべて
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